爽やかな秋晴れの空。朝日の眩しさを目に焼き付けつつ
今日もサッカー野郎どもの面倒を見るために部室のドアを開けた。
にしても相変わらずたてつけ悪いな。
コンクール開催してる暇があればこっち直せばいいのに。
「おはようー皆」
「「‥‥」」
おや?何だこの沈黙は。というか皆一様にマヌケな顔をしてこちらを見ている。
とうとう私から放たれる
隠せない神々しさに気が付いたのだろうか。
昨日までとは違って見える同級生にトキメキを‥
「お前部室に入るときはノックしろって言ったろうが」
「おはよう今日も朝から男らしいな、日野」
「おー日野。今日は暴れるんじゃないぞー」
「お前今日は大人しくしてろよ」
「何のことかさっぱり分かりません」
覚えてるわけないな。このサッカー馬鹿僧達め!!!!
どいつもこいつも年頃の乙女を捕まえてなんと言う暴言。
この花も恥らう、サッカー部のむさい部室に咲いた一輪の薔薇。
小野小町もびっくりな激乙女属性のこの私に。
だいたい、こんな大和撫‥‥
「
大和撫子とか言おうもんなら張ったおすぞ、日野」
私が真剣にサッカー部員達の脳内構造を憂いていると、
背後から土浦が対乙女用とは思えない暴言を口にしながらにゅっと現れた。
驚かなかったといえば嘘になるが、動揺したら負け。
乙女は清く正しく
ピッと凛々しくですよ!!
「事実だからいいじゃない。つかアンタなんで私の考えてる事が‥
はっ!!もしやストーカー!?」
気が付きたくなかった同級生男子の本性に恐れおののいて思わず一歩下がってしまう。
私の
可憐な乙女のポリシーを持ってしても対処できないほどの
衝撃的な事実に気が付いてしまった。
いかん!!いかんですよ!!土浦!!
いくら何でも犯罪ですよ!!
「そんな時間の無駄としか
いい様のないマネはしねぇよ」
やれやれ、隠さなくても‥そりゃこの純情乙女っぷりをみてときめく
思春期の男子生徒の悶々とした気持ち、
そしてそれをひた隠しにしようとする純情は分からなくもないけど‥
本当に美しさって罪なのね‥
「頬染めてんじゃねぇ、気持ち悪ぃ!!大体考えてる事顔にですぎっつーか
考えてる事全部口に出てるんだよ!!」
「薄っすらと頬を染める美少女なんて最高にたまらんシチュエーションにケチつけるんなんて
これだから昔彼女がいたなんて過去の栄光にすがっている男は‥
それだけ‥うを
痛ーーーーー!!
ちょ‥アンタと違って何処もかしこも繊細に出来てるんだから
腕雑巾とか止めな‥痛‥マジ痛、いいいいいすいませんでした離して。
ちょっとしたジョークっていうか調子乗った、明らかに調子に乗った。
ウン反省した(多分)反省した」
ちょっとした乙女のジョークにここまで反応する事もなかろう。
全く心の狭い男だ。
彼女ネタを口にすると毎回ちょっとキレ気味になるのだが
あれだろうか、実録悪い女(定価630円)にでもマンガが掲載されそうなほど
可哀想な振られ方でもしたんだろうか?
前にあった時は、どちらかといえば彼女が土浦に未練たらたらのようだったが‥
もしかしてあれかな。
1度はサッカー馬鹿僧ぶりが寂しくて他の人に走ったけど
やはり貴方が忘れられないの!!貴方のことが好きなの!!
っていう昼ドラにありがちな設定かな。
コンクール中で忙しくてちゃんと話聞いてなかったんだよね。
月森くんと土浦及びその元彼女と出掛けた時も眠気で意識が何回も飛びそうになって
あろうことか月森君に
生活習慣を整えることの大切さを説教されてしまったし。
それにしてもまだ腕が痛い。
本気で乙女の腕を雑巾絞りするなんて‥私が心が菩薩のように広いからいいものの
普通だったら損害賠償請求な慰謝料モノですよ!!
精神的苦痛を与えられましたよ!!お母さーーーん
じゃないや、
姉さん、事件です。
「嘘付けこれで何回目だ。大体反省してないだろ。その思い切り不服そうな顔は」
土浦はこめかみがぴくぴくと動かしつつ、
腕を思い切り雑巾絞りにしたその手で今度は胸倉を掴んできた。
「してるわよ」
「してない」
「してる」
「してない」
「してないって言う方がしてないんです」
「そうかしてないんだな」
いやん。ちょっとした冗談ですよ。
朝からマジギレなんて体に悪いですぜ旦那。
というかサッカー部員ニヤニヤ見てないで助けろ。
佐々木アンタの爆笑した顔忘れないから。
全員今日の放課後の部活と、
授業中には背後に気をつけろ。
この後、私の誠実な心からの言葉と、
男は乙女に暴力を振るうなんて言語道断という
レディーーファーストの精神を思い出したのか
殴られる事もなく解放され何事もなかったかのように練習が開始された。
悔しいので朝練が終わったら膝カックンしてやろうと思う。
朝練まで見学に来る、コンクール後に増えた(らしい)ファンの子と共に
絶望に散るがいい。
この時は想像もしていなかった。
あの春の狂乱が再び私を巻き込むことになるなんて。
ええ、想像もしていませんでした、本当に。
この時点では部屋の隅で埃かぶってましたし。
ヴァイオリン。
何とでも言ってください。
ただ言い訳させて貰えるならば普通に忙しかったんです。
部活と学校生活の両立させるのでいっぱいいっぱいなんです‥はい。